Rodolphe Gasché, “The
Destruction of the Inalienable: Storytelling in the Age of Disaster”
ごく図式的にガシェのセミナーをまとめれば、(ハイデガーの「存在」に対抗して)「物語」を人間の根本的な条件として主張したシャップの哲学とその限界の検討であるといえるだろう。
ただし、シャップの限界を指摘したからといって、そこからハイデガーの正しさを再確認するわけではない。
サバイバーのMutenessに物語る能力の喪失・破壊を見いだすガシェは、人間の条件として「物語」を構想したシャップの哲学を最大限に評価する。
ガシェがシャップの限界としてみているのは、彼がこの「物語」が破壊されるという現象を決して想定することがなかったということである。すなわち、「物語」という人間の根本的な条件の脆さである。
つまり、物語は人間にとってファンダメンタルであるが、それはまた脆弱な基礎でもある。
続く